日時や経緯について
ピアノとウェルビーイング研究所の所長である安永さんより、静岡日仏協会が主催する、プロピアニストのパトリシア・パニーさんのコンサートをプロデュースしていただけませんか?とご提案がありました。
我々はあまり、人を集めることに長けてはいませんでしたが、せっかくの機会と考え、浜松医科大学ピアノ同好会の方々と一緒にお手伝いさせていただきました。
開催日時は2024年の3月8日(金)、会場はかじまちヤマハホールです。
鍛冶町が山葉寅楠のオルガン修理に端を発した、日本の楽器産業始まりの地の近辺です。(間違っていたらすみません)
プロデュースで何が必要なのか?
プロデュースとは制作するという意味ですが、はじめての経験なので「何が必要なのか?」を考えて、行動する必要があります。
お話を頂いた時の状況を考えると、下記のようになっていました。
日時は確定し、会場の手配は終了済み、当日のプログラム(曲目)は決まっているという状況。
まずは、我々の定期演奏会でやっていることを整理してみました。
- 参加者の確認と日時の決定
- 曲目の決定、演奏プログラムの作成
- 会場の予約
- 演奏会ポスターの制作
- 演奏会のタイムテーブル制作
- 広報(SNS告知・Webサイトでの告知)
- 動画撮影
- 動画編集・事後報告
ここから、今回のプロデュースにおいて我々がやらなくていいこと、追加でやらなければならないことを考えてみた結果、最終的に以下のようリストアップしました。(太字は当団体がはじめてやること)
- 演奏会ポスターの制作
- チケット予約システムの考案と開発?
- 広報(SNS告知、Webサイトへの掲載、市の公民館や音楽団体・静大へポスター掲示)
- チケット予約者の照会
- 会場整理
- 事後報告
今回の演奏会は、我々の演奏会のような入場無料・自由入出上形式と違うため、入場者を管理できるチケット予約システムの考案と開発?をしなければいけません。
当然ですが、予約者だけを会場に入れるためにチケット予約者の照会もできなければいけません。
また、多くの方々へ入場してもらうために、市の公民館や音楽団体・静大へポスター掲示を追加で行わなければいけません。
静大ピアノサークルの場合は費用面を考慮し、インターネット上で完結していますが、もちろん下記のようにアナログなポスターも掲載したことはあります。
しかし、市の公民館や音楽団体へのアナログなポスター掲載のそれとは全く違うものですので、勉強しなければいけません。
特にサークルでやったことがない、新規で行うものは大変です。
ノウハウもありませんし、新規で行うものの多くは、プロデュースのコアにかかってくる部分なので失敗できません。
その中でも大事なものを考え、「予約システムの考案と開発?」「広報」にリソースを注力する方針を取りました。
なお、会場整理に関しては静岡日仏協会の意向があることと、浜医の部長さんがコンサート経験が多いことから、ボトルネックにはなりにくいという判断をしました。
まずは、有料コンサートにおいて必須となる「予約システムの考案と開発?」を考えました。
予約システムの考案と開発?
いわゆる予約フォームはGoogle Formに代表されるように、無料で高機能なものが既に存在をしています。
当団体の名簿提出にもそれを利用しており、真っ先にGoogle Formでチケット予約システムを作成することを考えました。
しかし、Google Form単体ではチケット予約システムにとって不完全な要素があります。
第一に、チケットIDを付けて聴講者へそれを周知することができません。これでは、会場整理でもたついてしまうことが予想されます。(名前や電話番号から、予約者本人かどうか紹介するのは人間の処理時間の遅れがある)
第二に、席数が決まっており、売り切れてしまった場合に予約フォームを閉じなければいけません。当然ですが、超過した方々にはチケットが取れない旨をメールする必要があります。
そこで、既存のチケット予約システムが使えるスマホアプリなどを使って予約システムを構築しようと考えました。
しかし、静岡日仏協会の方から「クラシックのコンサートや今までの客層を考えると、全員がスマホを持っているわけでもないし、全員がアプリの会員登録やインターネットで予約を自然にできる人ではない」とお聞きしていたので、アプリを使うわけにもいきませんでした。
運営者が代理でチケットを買えるシステムでないといけないのです。
既存のチケット予約システムは開発不要で簡単に利用することはできるのですが、日仏文化協会の助言に対して、対応できる柔軟性があるかは不明です。(運営者本人の予約はサクラのように捉えられてしまい、アプリ側で禁止されている可能性もあります)
そこで、Google Formを少しプログラミングによる改良して、目的の予約フォームを作成することを考えました。
試行錯誤の末、何とか「チケットIDの付与」と「チケット枚数が定員を超えた場合に、予約付加メール送信」機能を作成できました。
ただ、排他処理がとても難しく骨が折れました。
排他処理(排他制御)というのは、一つしかない資源を共有する際に競合が起きないようにする処理のことです。
「食事する哲学者の問題」が、排他処理しなければいけない例としてよく紹介されますね。
この問題は、デッドロック状態(処理終了を待っていることが終わらずに、処理が進まなくなってしまう状態)を説明することに使用されます。
今回の場合はデッドロック状態ではなく、複数人同時に予約フォームへ情報を送信すると、全員一番最後に送った人の予約IDが記されることや、そもそも予約IDが付与されない問題です。
なぜこのようなことが起きるかというと、予約IDの付与処理が完了する前に、割り込み処理的に新しい予約が来てしまうからですね。
これによって、本来意図した順番で予約フォームの処理が行うことができず、おかしな予約IDが付与されてしまいます。
この問題を解決するために、処理が終わるまでは他の処理は待ち状態にする排他処理を導入しました。
起こる可能性は低いかもしれませんが正しく予約できた方々へ大きな迷惑が掛かってしまいます。
そのため、無事に排他処理ができて本当に良かったです。
チケット予約照会はチケットIDを付与したら解決されるので、これにてチケット予約システム完成です。
広報
今までの広報と違い、今回は多くの方々へ入場してもらわなければいけません。もちろん、依頼されている立場ですから失敗してはいけませんし、外国から来られたピアニストの演奏を皆さんに聞いていただきたいからです。
まずは、多くの方々へ認知してもらうためにポスターを多方面へ配らなければいけません。
そのノウハウが無いことから、まずはマニュアルやルールが整備されている、大学と市営の公民館へ配布することを考えました。
大学に関しては然るべき機関の許可を得られれば問題ないので、市営の公民館の手はずを整えます。
ありがたいことに、上記のように浜松市ではチラシを置くためのマニュアルがインターネットに掲載されています。流石は音楽の街ですね。
もちろん、ポスター自体は公民館へ置くためにアナログで持ち込まないといけないですが、ほぼ手続きがインターネットオンリーで終わるのは、本当にありがたいです。
数百部のポスターを10部ごとにまとめて、それぞれの地区ごとに配架するためにラベル付けをするという作業は中々大変でした・・・
しかし、公民館の利用者の中には音楽をやっている方もいますので、中々悪く無い選択だったと考えています。
それ以外の大学関係者や音楽団体への周知に関しては、浜松医科大学ピアノ同好会の方々にお任せをしました。
特に浜医の方々は演奏会のセオリーを知っているので、我々のようにマスに向けての広報ではなく、演奏会に興味がある方々を中心にしてくださいました。
静大側は大衆に向けて、浜医側は音楽関係に向けて、そしてそれぞれの大学でも宣伝をしてくださいました。
これにて、広報でできることはやり終えたかなと思います。
ただ、集客に心配だったので、藁にも縋る思いで、駅前にて試しにビラ配りを行ってみました。現状に不満を持っていて、ただ動かないというのは良くないですから。
結果としては、全く受け取ってくれませんでした。
しかし、流石は音楽の街です。音楽をやっている方から逆に声をかけてくださったこともあります。
こういった共通項があれば、色々な方と繋がることできるかもしれませんね。
もし、我々がピアノ文化を広げることができれば、大学や年齢を超えてあるいは・・・
ビラ配りを通して、不特定多数への宣伝の無意味さというのを痛感しました。
広告というのは、ある程度興味を持ってくれる人を選ばないと全く意味がないのですね。
また、賢くなれました。
当日のレポート
15時ごろにコンサートは開催となりますので、12~13時ごろにメンバーはかじまちホールへ集合となりました。
設営準備などを本来はしないといけないのですが、今回は主催の方々がある程度行ってくださいました。感謝です。
時間になり次第、来場者を名簿と照会し会場へ案内していきます。
ここら辺は格別なことをしていません。
上記はパトリシア・パニーさんのコンサートの曲目となります。
かじまちホール8Fの摩天楼からの景観を背景に、間を縫って写真を撮りました。
中々素敵な場所でした。
コンサートは我々も聴講しました。
自分自身はレクチャーコンサートというものが初めてだったのですが、ピアニストの曲に対する考えや解釈を聞ける貴重な機会となりました。
__コンサートが終わっても、次のリサイタルも我々はありますので休む暇はありません。(今思い出したら、普通にみんなで休憩がてら、カフェ行ってました;;)
夕日が沈みかけても、まだまだ続きます!
最初のコンサートで我々一同コツを掴んだのか、リラックスして円滑に受付もこなすことができました。
浜松医科大学ピアノ同好会の方々と話をしていたら、あっという間に時間が過ぎ、リサイタルの時間となりました。
こちらも同様に、聴講をしました。
パトリシア・パニーさんは夜に関連した曲を展開され、本当に心地よい時間が流れました。生でピアノを聴くことはいいですね。
また、知ってる曲を聴くのも大好きですが、こういって未知の曲と邂逅することも中々良いですね。
無事に2つのコンサートをプロデュースし終えて、浜松医科大学ピアノ同好会の方々、ピアノとウェルビーイング研究所の安永先生、静岡日仏協会の今野先生と写真を撮りました。
この度は貴重な機会を与えくださり、誠にありがとうございました。
おわりに
今回のパトリシア・パニーさんのプロデュースに関しては、大学生如きが単独で行うことはできなかった貴重な体験でした。もちろん、体験が貴重かどうかで価値が決まるわけではありません。
それでも、今まで体験していないことを乗り越えて、多くの方を素晴らしい演奏会へ集客できたことは価値があると考えています。
実際にやってみて、プロレベルの演奏会を成り立たせるために、多くの人の努力のもと成り立っていることを痛感しました。
演奏会の主役はもちろんパトリシアさんですが、プロジェクトとして考えたとき、全員が演奏会を成り立たせるには必要な主役だと思いました。
また、この活動をとおして、奏者としてピアノ文化を広げる以外の楽しさを感じました。
弾くだけでなく、色々な方法をとおしてピアノ文化に触れ、広げる。その楽しみを再発見できたことも非常に良かったです。
今回の経験は静大ピアノサークルのアイデンティティを見つめなおす良い機会になったと考えています。
みなさん、ありがとうございました。