静大ピアノサークルがクラウドファンディングに至る背景

はじめに

このページは静岡大学ピアノサークルが11/4〜12/30(23時)まで開催をしている、大学の傷んだピアノをグランドピアノに置き換えるためのクラウドファンディングの補足ページになります。
当団体がクラウドファンディングに至った背景を、クラウドファンディングの本体ページで詳細に書いてしまうと、長すぎる or 複雑すぎるため、このページで紹介をします。

前提知識

2024年・10月現在、静岡大学・浜松キャンパスには、赤枠の二か所の施設でアップライトピアノが設置されています。(※研究用途のピアノなどは除く)

  1. 佐鳴会館
  2. 課外活動共用施設の部室
浜松キャンパスでピアノが存在する施設(静岡大学 浜松キャンパスのマップ,https://www.shizuoka.ac.jp/access/document/cmap_hamamatsu.pdf)

佐鳴会館は予約をすれば、全学生・全団体が使用できるピアノが使用できるホールがあります。大人数が集まれるホールであるため、ピアノ以外に音楽団体の合奏や演奏、授業でも使用される施設です。

課外活動共用施設は、部室がある一部の公認課外活動団体しか使用できない施設です。一部の音楽団体は、部室にピアノを設置しているが、使用できるのはその団体に所属する団員だけです。
専用の部室が無い団体も多く、他団体と共用で使用している場合も多いです。

結論から話すと、両方の施設においてピアノの状態が悪く、課外活動共用施設より練習・演奏会に適した場所で、他音楽団体も使える、佐鳴会館のピアノを置き換えることを私たちは決意しました
以下は、その背景について説明しています。

静大ピアノサークルの歴史と練習室の必要性

静大ピアノサークルは2016年設立がされた団体ですが、その当時から学内に状態が良いピアノが無く、学内での演奏活動の展開が困難で、2020年に一度滅びました。
下の画像から、2020年から2022年は活動報告がされておらず、ツイートからもメインの活動場所が”学外”であったことが読み取れます。
実際に、2022年時点の部員は1名だけであり、事実上団体は瓦解していました。

瓦解した原因はコロナなどの影響はありますが、一番は「学内に状態が良いピアノが無かったこと」です。
状態が良いピアノが学内にないと…

  1. 学内で、演奏会や弾き合い会が開けない
  2. 学内で、部員が練習できない
  3. 学内で、ピアノ関連のイベントを開いたとしても、人が集まらない
  4. (毎回)学外の施設でピアノ関連のイベントを開いたとしても、お金や時間がかかり人が集まりにくい

上記のような状態に陥ります。
学内で練習もできない、演奏会も開けない、イベントも無い、学外でイベントの開催も難しいサークルになってしまい、サークル活動を維持することは難しいです。
※学外でピアノ関連のイベントをする場合は、施設の利用代金と施設までの移動時間が、学内で行う場合よりかかります。

その教訓を生かし、当団体は演奏以外の活動を年間行事に組み込むなど対策をしてきましたが、学内に状態が良いピアノが無い問題は解決できていません。
したがって、旧ピアノサークルが滅んだ原因を今でも解決できておらず、音楽団体としては練習設備が無いという危機的な状況は変わらないのです

この問題の解決を難しくしている一番の原因は、ピアノという楽器の特殊性です
ピアノは部屋に設置しなければ演奏ができないため、他の楽器よりも演奏ハードルが高く、場所さえあれば楽器を持ち運んで問題解決!とはならないのです。
また、ピアノの状態が悪ければ我々サークル、もとい演奏者側でやれることはありません。
ピアノの調律が技術的にも難しいということもありますが、基本的に学校の設備であるため、演奏者ではピアノの状態をどうすることもできないのです。

共用の練習室の獲得と設置されているピアノの問題

2024年度、静大ピアノサークルは大学公認団体となりましたが、もちろん専用の部室を手に入れることはできません。既に課外活動共用施設の部室は満杯ですので、新規で公認化した団体は部室が空くまで、部室なしの状態で活動をしなければいけません。
浜松キャンパスの全公認音楽団体の中で当団体と同じく専用の部室がないサークルは、アカペラサークルが存在します。
アカペラサークルが2005年に設立された歴史を持ちながら、専用の部室がないことを鑑みると、静大ピアノサークルも20年以上は今の状況が続くことが予想されます。(なお、今の環境では数年間、団体が存続するかも怪しいです。)
その間に、課外活動共用施設の建て替えがあれば部室は増えるかもしれませんが、国立大学の資金難を考慮すると、莫大な資金がかかる建て替えはいつになるのかわかりません。

幸運なことに、当団体は課外活動共用施設の器具庫(ピアノが設置されている)を、他団体との共用という形になりましたが獲得できました。器具庫で防音設備が無くても、部屋が小さくても、部屋が共用だったとしても、状態が良いピアノが無い静大ピアノサークルにとっては、大きな一歩となるはずでした。

課外活動共用施設で当団体が使用している練習室(器具庫)

蓋を開けてみると、ここに設置されているアップライトピアノの状態は悪く、おおよそ鍵盤の10箇所から音が出ないほど酷いものでした。設置されている場所が防音でない、器具庫であるため自分自身の演奏を聴くことができず、練習に不適ということもありました。
中でも、鍵盤から音が出ないことは音程が酷いことよりも致命的な問題であって、演奏者では解決できません。
専用の部屋ではない関係で、新規でピアノを置くことは難しく、そもそも部屋が狭すぎて追加設置できるかもわからない状態です。

音が出なかった鍵盤一覧

つまり、当団体は公認化をしても学内に状態が良いピアノが無いという問題を解決できず、他音楽団体が当たり前に行なっている練習を、以前と同様に行うことができなかったのです。

もちろん、部室が無い大学公認団体(運動、音楽、文化系問わず)は浜松キャンパスにたくさん存在します。
しかし、ピアノは部屋に設置しなければ演奏ができないため、他の楽器よりも演奏ハードルが高く、場所さえあれば楽器を持ち運んで問題解決というわけにはいきません。
そして、その場所に設置されていたピアノの状態が悪ければ、我々だけではどうやっても解決できないのです。

佐鳴会館のピアノの状態

佐鳴会館に設置されているピアノは、全学生・全団体が使えるものですが、ここのピアノも状態が悪いです。
鍵盤を押しても音が出ない場合があるだけでなく、ペダルが軋み、雑音が鳴る場合があります。

調律がされて、一時的に状態は改善していますが、下記のようにピアノのボディは痛み、鍵盤は黄ばみ、キャスターはさびついているため、耐久性に限界が生じています。
したがって、いつ上記の問題が再発するかは未知数であり、なんらかの部品(響板・アクションなど)が使えなくなる可能性もあります。

大学側へ音が出てないことを訴え、追加の調整をお願いすることは何度かありました。
しかし、ピアノハンマーの溝や外装の傷などは少なくとも2019年から放置されており、通常の調律以上の代金がかかることは行われてきていないと推測できます。
したがって、現在のピアノを直すことは可能ですが、今まで放置されてきた外装補修、ハンマーのファイリングなどを考えると、根本的解決には数十万の費用がかかると考えられます。(YAMAHA・リニューアルプランを参考に価格を推定)

実際に、ピアノ部品メーカーの方がこのピアノの評価をしてくださいましたが、「オーバーホール(部品単位まで分解し、修理や部品交換をする修理)が必要」という、我々の見解(根本的な修理が必要)と近い結論になりました。
なお、オーバーホールはピアノの年数や状態によっては、新品ピアノと同等の価格が必要になります。

放置された内部のハンマーの溝


このピアノは、YAMAHAが公開しているアコースティックピアノの製造番号と製造年数を示した資料から、1972年製造のピアノであり、製造から50年以上の年月が経過していることがわかります。
一般的なピアノの耐用年数が30年(YAMAHAのウェブサイトの記述)ですから、このピアノは大規模な設備更新が必要ということになります。
きちんと手入れをされていれば30年以上使用することができますが、残念ながら上述の状態はきちんと手入れされているとは言えません。

ピアノの製造番号

なお、ピアノには備品管理シールが貼り付けられており「教育学部備品」と記述されています。
そのことから、静岡キャンパス側の教育学部・音楽教育専修学科で使用されて、耐久性が限界になったピアノを浜松キャンパスに持ってきた歴史があると推測できます。1

大学から新規でピアノを購入するといった大規模な設備更新の予定はなく、国立大学の慢性的な資金不足を鑑みると、今後も期待はできないと考えています。また、学生がその金額を負担することも難しいです。
そして、私たちは新設の団体であるため、実績が少なく、音楽メーカーからピアノを寄付してもらうことも難しいです。
実績を積んでから周りに訴求することも考えましたが、状態が良いピアノがないと実績(活動年数、演奏活動)を積み重ねることができないという悪循環があります。

したがって、両方の施設においてピアノの状態が悪い状況に当団体は立たされていました。
そこで、課外活動共用施設より練習・演奏会に適した場所で、他音楽団体も使える、佐鳴会館のピアノを置き換えることを私たちは考えました。

クラウドファンディングを決意

大学からピアノの大規模な設備更新の予定がなく、学生が設備更新をするとしても、その金額が大きすぎる。また、誰かからピアノを全額寄付してもらうことも、実績が少ない新設の団体には難しい。
そこで、能動的に多くの方へ寄付を募る必要があると考え、クラウドファンディングを決意しました。

資金ハードルを下げるために中古ピアノも検討しましたが、大学へのピアノの寄贈は新品に限定されています2。そこで、一番安価なグレードのグランドピアノの新品を納入しようと考えました
なお、他サークルの活動や授業利用の邪魔にならないために、大学側と協議して、一番小さい(安い)ピアノを選択したということもあります。
※納入先企業からリベート等はいただいておりません。

購入予定の最小サイズのグランドピアノ(YAMAHAのカタログより引用,https://jp.yamaha.com/files/download/brochure/2/1102572/PGA202304.pdf)

なお、グランドピアノに置き換える理由は下記のとおりになります。

  1. ピアノの表現力が上がることで、練習と演奏の質が向上するため
  2. 外部施設での演奏を想定すると、本番に近い環境(グランドピアノ)で練習した方が好ましいため
  3. 下宿をしている学生が、練習できる機会が少ない楽器であるため
  4. 現在のピアノの耐久性が限界に近く、買い替えの適切な時期と判断したため
  5. 日本のピアノ製造の中心的な都市・浜松市にふさわしい楽器であると考えたため
  6. グランドピアノの音楽的な魅力によって、設置しても学生から使われないことを避けるため※もちろん当サークルは使用します

さいごに

このような背景があって、静岡大学ピアノサークルは傷んだピアノをグランドピアノへ置き換えるクラウドファンディングを立ち上げました。
ピアノ製造の歴史がある浜松市で活動する団体として、是非ともグランドピアノを浜松キャンパスに設置し、我々だけでなく静岡大学の学生に弾いてもらいたいです

そのために、どうか皆様のお力をお貸しください
ご支援、ご協力をよろしくお願いいたします

  1. 2023年に関係者にこのピアノの来歴を調査していただきましたが、詳細は不明でした。
    学生だけで調査できる範囲内ではこのような結論になりましたが、ボロボロのピアノを静岡キャンパスから持ってくることを繰り返していては、根本的な問題解決になりません。 ↩︎
  2. 専用の部室があって、団所用のピアノが設置できるならば、おそらく中古ピアノの納入は可能だと推測されます。 ↩︎